桜井市、多武峰(とおのみね)の談山神社(たんざん神社)では、毎年春と秋に「けまり祭」が執り行われます。2025年は4月29日と11月3日の開催が予定されており、平安時代から伝わる伝統文化を間近で楽しむことができます。
けまり祭の見どころ
本殿の儀(11:00~11:30)
祭りは談山神社の神職と京都の蹴鞠(しゅうきく)保存会の鞠人(まりひと)たちが社務所前から出発するところから始まります。まず本殿で奉告祭が行われ、神前に鞠を奉納する儀式が執り行われます。
蹴鞠奉納(11:30~12:30)
本殿での儀式が終わると、いよいよ鞠庭(まりば)で蹴鞠(けまり)の奉納が始まります。
鞠庭は舞殿と神服殿の間にある、一辺約10メートルの四角い庭で、四隅には青竹が立てられています。
最初に「解き鞠の儀」で、神前から下げた鞠を枝から外す儀式が行われ、そのあと8人の鞠人(まりびと)が円を作って蹴鞠を披露します。
次の回では鞠人が入れ替わり、さらに見ごたえのある技が楽しめます。
蹴鞠とは?
蹴鞠(けまり)は、平安貴族の遊びとして愛されていた球技で、サッカーのルーツとも言われています。飛鳥時代に大陸から伝わり、『日本書紀』にも記録があるほど古い歴史があります。談山神社で行われるけまり祭は、大化改新の立役者である藤原鎌足と中大兄皇子が蹴鞠(けまり)をきっかけに出会った故事にちなんだお祭りです。
蹴鞠(けまり)では、鞠人(まりびと)と呼ばれる演者たちが、鹿皮で作られた鞠を右足だけで蹴り上げます。「アリ」「ヤア」「オウ」という掛け声が鞠庭に響き渡り、見事なプレーには観客から歓声が沸きます。
魅力的な装束と道具
鞠人(まりびと)は、平安時代の装束を身にまとって登場します。
頭には烏帽子(えぼし)、衣は色とりどりの鞠水干(まりすいかん)や鞠袴(まりばかま)、足には鞠靴(まりぐつ)を履き、手には鞠扇(まりおうぎ)を持っています。
鞠は鹿の皮で作られた卵の形をしており、直径は約20センチ、重さは150グラムほど。
これを上手に足でけり合う姿はとても優雅で、見ているだけでも平安の雅(みやび)な世界を感じられます。
アクセス・拝観情報
- 住所:奈良県桜井市多武峰319
- 最寄り駅:近鉄・JR桜井駅
- バス:桜井駅南口~談山神社下車 徒歩3分
- タクシー:約4,000円(目安です)
- 拝観料:大人(中学生以上)600円、小学生300円
- 受付時間:8:30~16:30(最終受付16:00)
- 駐車場:普通車無料(一部有料)
- お問合わせ先:談山神社 0744-49-0001


藤原鎌足と中大兄皇子 ― 蹴鞠が結んだ運命の出会い
談山神社(たんざんじんじゃ)は、藤原鎌足(ふじわらのかまたり)をまつる由緒ある神社です。
約1,400年前の飛鳥時代、当時の都・飛鳥で行われていた蹴鞠の席において、のちの天智天皇(中大兄皇子)と藤原鎌足(かまたり)が出会った、という伝承があります。蹴鞠の途中、中大兄皇子の靴が脱げたところを鎌足が拾って差し出したエピソードも語られています。
その後、中大兄皇子と鎌足が、この地で大化の改新の計画を語り合ったと伝えられ、「談(かた)らいの山」という名が神社名の由来になっています。
境内には日本唯一の木造十三重塔(じゅうさんじゅうのとう)が建ち、秋の紅葉の名所としても知られています。
また、鎌足が蹴鞠を通じて中大兄皇子と出会ったという故事から、毎年春と秋には「蹴鞠祭(けまりさい)」が行われています。平安の雅(みやび)を今に伝える優雅な行事で、色鮮やかな衣装をまとった蹴鞠人(けまりびと)たちが、鞠をけり合う姿は見る人を魅了します。


まとめ

けまり祭は、平安貴族の雅な遊びと、歴史上の名立たる人物たちの故事を体感できる貴重な機会です。円陣を組む鞠人たちの息の合った蹴り上げや、美しい装束の彩り、掛け声が響き渡る庭は、まるでタイムスリップしたかのような空間。
古の文化を体感しながら、紅葉で有名な秋の談山神社の風景も楽しみませんか。



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