【10月8日】奈良豆比古(ならづひこ)神社の翁舞|伝統的なイベント紹介

奈良豆比古神社の舞の小さな画像Small image of the dance at Naramamehiko Shrine 奈良の祭りや行事

奈良市の北端、京都へ向かう旧奈良街道沿いの奈良阪町。
この地の鎮守「奈良豆比古神社(ならづひこじんじゃ)」では、毎年10月8日の宵宮に「翁舞(おきなまい)」が奉納されます。
拝殿の灯に照らされ、三人の翁がゆるやかに舞う光景は、奈良の秋夜を幻想的に染め上げます。

この舞は、能や狂言の原型といわれる古式の神事芸能で、2000年(平成12年)に国の重要無形民俗文化財に指定されました。

近くにコスモスで有名な般若寺があります。時間があれば、ぜひこちらにもお越しください。

開催情報

日時:2025年10月8日(水) 20:00頃〜
場所:奈良豆比古神社 拝殿(奈良市奈良阪町2489)
指定:国の重要無形民俗文化財
主催:奈良豆比古神社翁講
※YouTube配信は数日後に行われ、アーカイブ視聴も可能です。
 令和6年 奈良豆比古神社 翁舞 YouTubeチャンネル


起源 ― 皇子たちの祈りに始まる

伝承によると、この舞の起こりは、春日王の病気平癒を祈って第一皇子・浄人(きよひと)と第二皇子・安貴王(あきお)が舞を奉納したことにさかのぼります。
その後、奈良豆比古神社は地域の守護神として信仰を集め、秋祭の宵宮で「翁舞」が奉納されるようになりました。

舞の特徴

奈良豆比古神社の翁舞の最大の特徴は、三人の翁が登場することです。
全国に数多く残る翁舞の中でも、この形は非常に珍しく、奈良の古い神仏習合の文化を色濃く残しています。

中世には、興福寺や春日社の神事において、奈良を拠点とする「宝生・金春・金剛」の三座が立ち合い、三人の翁が登場する形式が見られました。
奈良豆比古神社の翁舞も、その流れを受け継いだものと考えられています。

舞の構成と進行

翁舞は、能と同じく「千歳(せんざい)」「翁」「三番叟(さんばそう)」の三役によって構成されます。

  • 千歳 … 少年が演じ、祭礼の幕開けを告げる清めの舞。
  • … 白髪の翁が登場し、寿(ことほぎ)と鎮魂の祈りを込めて舞う。
  • 三番叟 … 若者が演じる祝福の舞。生命の再生や豊穣を象徴する。

この舞では、千歳が舞ったあと、まず一人の翁が舞い、やがて左右の脇翁が並び立つ「三人の翁の舞」となります。

その後、翁たちが退場し、三番叟の軽快な舞で締めくくられます。

拝殿に掛けられた橋掛かりを渡り、神主・楽人・舞人が登場する様子も厳粛で、能舞台を思わせる格式を今に伝翁を演じるのは60歳前後の男性、三番叟は青年、千歳は13歳ほどの少年が務めます。
代々、奈良阪町の住民が役を引き継ぎ、毎年9月下旬から夜ごとに稽古を重ね、本番を迎えます。
世代を超えて伝承されるこの形は、まさに地域の信仰と誇りの結晶です。

アクセス

JR・近鉄奈良駅より
青山住宅行又は州見台(くにみだい)八丁目(バス13分)「奈良阪」下車 徒歩5分

三人の翁が舞う、全国でも稀な形の翁舞。
奈良と京都の境に伝わる、祈りと芸能が融合した神事。
皇子の伝説と地元講の信仰が生き続ける奈良の秋の夜。


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